当院で対応可能な内シャント治療(検査)
他院の透析患者さんからのご要望について
当院では、内シャントのカテーテル治療(検査)も、外科的内シャント作成手術も、どちらも承っております。当院の透析患者さんだけではなく、他施設で透析を受けていらっしゃる方でも、出来るだけ御依頼に応じるように致しております。
当院の内シャントカテ―テル検査や血管拡張手術は、エックス線と造影剤を用いた透視下検査(治療)と、超音波を用いた検査(治療)の両方で行っています。透視下も超音波下も、それぞれ長所・短所がありますので、その時の状況によって適宜、使い分けたり、併用したりしています。
ご注意
完全閉塞してからも48時間以内くらいまでなら、再開通を得られる事も珍しくはありません。(特に人工血管の場合) しかし、閉塞後、カテーテル開始の時間が早ければ早いほど、「成功率(再開通率)」は上がるものの、やはり、単なる「狭窄」の場合と比較すると、「完全閉塞」の場合は、「成功率」が明らかに低下します。
「閉塞」を「再開通」させようとする目的でシャントカテーテルを行った場合、それが不成功に終われば、すぐに外科的シャント再建手術が必要になる場合が大半です。(太い血管に透析用の一時的な留置カテーテルを挿入して、手術までの時間稼ぎをする事はどこの医療機関でも珍しくありませんが、それとて、時間稼ぎの間に、出来るだけ早く、次のシャント再建手術が必要になります。)
日本の透析医療と内シャント治療の現状について(一部、専門的内容を含みます)
「人工透析施設」のページでも御説明させて頂きましたが、日本の透析医療は世界でもトップクラスの水準を誇ります。数十年の長きに渡って透析を受ける方も数多くいらっしゃいます。
それは別な視点から見ると、透析を受ける方が、生涯の間に透析を受ける年数が長くなっているという事でもあります。維持透析の長期化に伴う様々な合併症にも数多く直面するようになってきている日本の現状があります。
中でも、内シャント血管関連の合併症(シャント狭窄・閉塞・感染・静脈高血圧・スチール症候群・瘤の形成)などは、どこの透析施設でもかなり頻繁に見られるようになっています。
少し専門的な話になりますが、米国のMichael Brescia医師とJames E. Cimino医師により、1966 年に発表された Brescia-Cimino の内シャントが,現在も慢性血液透析では標準内 シャントとして世界中で最も多く使用されています。
この手術方法は、それまでの外シャントと比べて、とても優れたものでしたので、瞬く間に世界中に広まりました。 しかし、外科手術によって、腕の動脈と静脈を人為的につなげる手術方法です。本来の血液が流れる経路を、手術によって人為的に変更させる「非生理的」流れになっています。そのため、内シャントは、手術をしたその日から、「いつかは閉塞する」宿命と戦って行かなければなりません。
ですから、透析歴が長い方の中には、両方の腕に何か所もシャント手術の創が見られる方もいます。本来の血流と異なる人工的な内シャントという状態に加えて、さらには加齢による動脈硬化などの変化も生じますので、なおさら閉塞しやすくなります。 近年までの透析医療では、内シャントが閉塞する度に、その都度、手術を繰り返して来ざるを得なかった歴史的経緯があります。
しかし、医学の進歩が、内シャント医療を劇的に変えました。血管カテーテル治療の急速な普及です。
これは、何十年も前から、心臓血管領域では、PTCAと呼ばれ、心臓の冠動脈が狭くなって、狭心症を起こした方や、心筋梗塞を起こした方などに、腕や足の動脈からカテーテルを挿入し、バルーン(医療用の数mm程度のごく小さな風船)で、狭くなった心臓の血管を拡張する治療でした。PTCAで血管を拡張できれば、その患者さんは、心臓バイパス手術を受ける必要が無くなるのですから、狭心症患者さんにとって、測り知れない絶大な恩恵をもたらして来た治療です。PTCAはその後の30年間で、さらに目覚ましい進化を遂げ、近年では、PCIと呼ばれるようになり、狭窄した血管をバルーンで広げるだけではなく、ステントという人工的な管を心臓の血管内に安全に留置できるようになりました。
この技術は、足や手の血管治療にも普及し、閉塞性動脈硬化症(ASO)で下肢切断の危機にある方や、透析の内シャント血管を閉塞から救う事が出来るようになりました。
当院も、別記のように透析のバスキュラーアクセス治療には長年力を注いで来ましたので、内シャントの外科的造設手術だけでなく、バルーンカテーテルを用いたシャント血管内拡張手術を日頃から多数行っています。
適応については、下記の日本透析医学会のガイドラインに従い、個々の患者さんのシャント治療歴、他の合併症の有無、原疾患(糖尿病か非糖尿病か)、患者さんからの要望などを、総合的に勘案して決めております。
参考
2011 年版 社団法人 日本透析医学会 「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの 作製および修復に関するガイドライン」
日本透析医学会の上記ページにある各種文書のうち、2011年に発表された上記タイトルの文書が、2019年9月現在も、日本の血液透析用内シャント(バスキュラーアクセス)治療のガイドラインになっています。該当するPDFファイルをクリックしてご覧下さい。
当院の内シャント治療全般(治療実績件数や写真を使った具体的な説明等)については、「人工透析施設」のページで御説明しましたので、こちらをご覧下さい。
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